下手出し投げを得意手にする力士をすぐに思いつくのは難しい、下手出し投げがそういう地味な決まり手であることは間違いありません。ましてや体ごとぶつけていくような、男っぽい豪快な速攻が持ち味の柏戸に下手出し投げのイメージは無い、と言えます。
写真の下手出し投げが決まったのは、昭和35年初場所の大鵬戦、柏鵬初対決の取組でした。新入幕の大鵬が初日から11連勝、止め男に選ばれたのが、同じく飛び切りの有望若手力士だった小結柏戸。
相撲は若手同士の激しい攻防の末、流れの中での下手出し投げが決まり手となりました。いぶし銀の力士が出しそうな決まり手が若手力士の攻防の結果となったのは、あの歴史的な突き押しの相撲となった麒麟児対富士桜戦の決まり手が上手投げだったのと似ていますね。
直線的な豪快な相撲で横綱を張り柏鵬時代を築いた柏戸が、その後下手出し投げを見せた記憶は私にはありません。力を尽くした大相撲を展開した中で咄嗟に出たという感じで、これはこれで、柏戸の珍しい貴重な一場面であります。
柏戸21歳、大鵬19歳・・・両力士とも、若い!