栃ノ心

栃ノ心 を怪力と呼んでほしくない、私にとっては原点回帰





もう一回、栃ノ心について書きます。私が一番最初に栃ノ心を見たのは、平成18年の秋場所でした。千秋楽の序二段の優勝決定戦、両力士ともに惚れ惚れする筋肉質で長身、激しい攻防から土俵際でつま先立ちになるほどの両者の引き付け合い。最後は栃ノ心が寄り倒されました。

当時、取組時間の短さと相撲内容の淡白さが取り沙汰されていた時代、序二段でこんなにもがっぷり四つの大相撲が見られるとは!と感動した記憶が今も鮮明にあります。

栃ノ心と同じぐらいの体型だった、このときの優勝力士に大いに期待したものでしたが、あの時津風部屋の痛ましい事件で角界を去りました。その無念さも含めて、栃ノ心の優勝は感慨深いものです。

栃ノ心は番付に載って3場所目で、変な言い方ですが、本当に見事な寄り倒され方でした。あの相撲に栃ノ心の打っちゃりの原点があるのかも。吊り出しだけでなく、打っちゃりも栃ノ心を支持したい点です。

しかし改めて言うまでもなく、今場所の栃ノ心は突っ張り、おっつけに差し手の返し、体の寄せ方、さらに左四つと、がっぷり右四つ以外でも進境著しい相撲内容でした。

それでも四つ相撲好きの私には、栃ノ心の右四つの相撲に最も魅力を感じているわけですが、栃ノ心の優勝時のマスコミの取り上げ方の多くが「怪力、栃ノ心」となっているのに違和感を持ちました。

「怪力」を強調すると、栃ノ心が規格外のパワーを持った特別の存在という扱われ方になってしまうわけですが、私はあくまでも正攻法を徹底した土俵が、多くの大相撲ファンに支持されたと思っております。

白鵬の、例の立合いから相手力士をあしらうような相撲とのコントラストもあって、栃ノ心の相撲が多くの共感が呼んだのでしょう。そして体のサイズこそ違え、かつての昭和の力士たちも筋肉質で骨太で栃ノ心的な体型だったのです。

そのどこか「懐かしさ」を覚える相撲は、全盛期の佐田の山や豊山を思わせ・・・さかのぼり過ぎか、しかし私にとっては大相撲の原点。だから、栃ノ心を規格外の存在に位置付けてほしくないのです。

もう一つ、今までのヨーロッパ出身力士の四股名は必ず、出身地に因んだ文字あるいは意味を持つ四股名だったのですが、初めての例外が栃ノ心。これは特筆すべきことかもしれません。

それと蛇足になるのですが、栃ノ心の打っちゃりに絡めて。最近大相撲のSNSで、土俵際で無理に残すとケガを誘発するとか、土俵の高さが危ないとか言われているのですが、あの土俵の高さがあるから受け身がとりやすいというのが本来の意味合いのはずです。

今、実際にケガをしないように土俵際で無理をしない力士もいるようですし、廻しの引き付け合いも減って、したがって寄り倒しの決まり手も減りました。受け身をとる機会も減るわけで、ケガに対する懸念はあります。土俵際で無理をしないといっても、攻めている方は必死ですからね。

大相撲力士名鑑 : 栃ノ心




4件のコメント

  1. 「怪力」からは外れるのかも知れないが、昭和40年代後半から50年代にかけて、荒勢vs高見山というモミアゲ自慢同士の対戦が好きだった。
    右四つがっぷりになると、最後は体の大きい高見山が勝つことが多かったが、当時のNHK解説の玉の海梅吉氏が「こりゃ明治以前の相撲だねえ」と呟いて、思わず吹き出したことを思い出す。
    「伝説の天覧相撲」麒麟児vs富士櫻もそうだが、コストパフォーマンス無視の「力相撲」(この場合は「両力士が十分に力を出し合って勝負する相撲」の意味)は年月が経っても心に残る。

    栃ノ心、以前は逸ノ城相手に右四つがっぷりの「力相撲」を取っていたが(十両で千秋楽、本割と決定戦連勝して優勝したことがある)初場所は年齢が6歳若い215㎏の逸ノ城の左上手を切って勝負を決めた。もう「怪力」というより技巧派だ。だから技能賞も受賞できたのだろう。
    まあマスコミは見た目で判断する。栃ノ心の師匠、春日野親方は強面とガラガラ声で損をしているが、NHKの解説を聴くと「理論派」だと思う。それに比べて(以下略)

  2. shin2さんへ
    コメント、ありがとうございます。
    栃ノ心の優勝については、「怪力」のフレーズと「平幕優勝」に関する数字としての記録が並べられていますが、もっと「大関への可能性」に言及してほしいと思います。盛り上がっている割には、大関以上の可能性については過小評価されているように感じる私です。外れたときが恐いのか? 力相撲とコストパフォーマンスということで考えると、今最もコストパフォーマンスが高いのは御嶽海でしょうか。

  3. 栃ノ心優勝で幕をとじ、いまだ感動の余韻が残っています。土俵の外ではいろいろありますな、改めて相撲の面白さや、今後のさらなる若手力士の活躍を感じさせました。管理人様にとって、怪力だけでなく過去現役含め最強の力士をお聞かせください。

  4. 相撲最強さんへ
    コメント、ありがとうございます。
    栃ノ心の四つ相撲をベースにした正攻法、逸ノ城に竜電も基本は四つで、突き押しの若手との絡みが興味深いですね。新十両は貴公俊と炎鵬という華のある力士で、幕下優勝も若隆景と、これからの土俵の展開が楽しみです。
    最強の力士、直接対決なら双葉山や白鵬に右四つを許さないであろう大鵬が、左四つの大相撲で勝つのではないかと思います。もちろん、対戦成績は拮抗すると思います。全盛期は短いものでしたが、吊り出しの玉の海の、関脇以下に全く負けない安定感は素晴らしかったと思います。

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