照ノ富士

照ノ富士 のここが素晴らしかった、そして5月場所に活躍した力士を総括なのだ





大相撲5月場所が終わった。照ノ富士の優勝が決まった瞬間、なぜかホッとしたという感覚だった。照ノ富士が優勝インタビューで、「やっと、終わったな」というコメントをしていて、私の安堵と照ノ富士の安堵はまったく違うものだけど、勝手に「横綱と共感している私」と思った。

一つ、感動した場面があった。制限時間一杯で、御嶽海が明らかに早く立った。照ノ富士は会釈をし、右の手のひらを土俵に対して垂直にして見せた。いわゆる、待ったのポーズだ。

実は最近、この待ったのポーズを見る場面が少なくなったことが気になっていた。突っかけられたら、「突っかけた方が悪い」みたいな顔をする力士が如何に多いことか。会釈さえもしないことが多い。そのくせ、いつでも手を付けるのになかなか付かない。

現代の大相撲は待ったをする力士よりも突っかける力士の方が、90%ぐらい非があるのかなって感じだ。だから久々に見る照ノ富士のきちんとした「待った」は、さすがと思った。

近年は駆け引きが多い。駆け引きがあっても良いけど、微妙にずらすとか、素人目には分かりにくい駆け引きであって欲しい。単に「早く立てよ」のレベルなら、止めてほしい。あと合わなかったからといって、行司が止めるより前に、勝手に相撲を止める力士たちの不自然さ。このセルフ不成立、たまにあるね。

横綱はいつでも受けて立つべき、という気持ちが照ノ富士には有るのだろう。しかし立合いに相手に合わせて立つという意識は、本来はすべての力士がある程度は持っていて欲しいものだ。

基本的には、立てなかった方が悪い。そして駆け引きをするのなら、琴錦や三代目若乃花のような、高度な駆け引きであって欲しい。ズルいだけなら、誰でも出来る。それでは以下、今場所気になった力士について。

若隆景は強かった。今場所、引き技と立合いの変化技で4敗している。タイミングで、どちらにも転ぶような勝負だった。照ノ富士にも両差しにまではなって、あと一歩だった。もっと星が伸びてもおかしくない、そんな相撲だった。

今場所は大関への星勘定に絡めた実況中継に、正直イラっとした。星勘定は関係ない。大相撲ファンを満足させる相撲を、今一番取れる力士だ。相撲の根気強さも、若隆景の真骨頂。それは大相撲にとって、一番大切なものだ。

11勝4敗と準優勝の大栄翔、本当に巧い力士だ。最近はあまり見せないけど、実は四つ身もキレイに組む。突き押しも四つも、相撲の教科書を作るなら、モデルは大栄翔が相応しい。押したり引いたりの、タイミングも素晴らしい。いやらしさは無いけど、いつでも真っ向勝負で良い。

そして隆の勝、実況中継で「今日は2番取るつもりで」という話が合った。当然、本割と決定戦という意味なわけだが、これを聞いてアレッと思った。力士の決まり文句は、「1日1番を集中する」だ。2番でも良いのですかと、突っ込みたくなった。

とは言え、攻めの幅は広くなったのは間違いない。広くはなったけど、攻め中心の相撲であることに変わりはない。そしてさらに上を目指すためには、守りの強化ではなく、もっともっと我武者羅な攻めが必要だろう。

その隆の勝に勝った佐田の海、今日の昼過ぎに書いたブログの通り、緊迫感あふれる激しい相撲を期待通りに見せてくれた。切れ味抜群の動きと土俵際の足腰の粘りは、35歳にしてまだまだ若い。目標は当然、父に並ぶ小結だ。

そして小結で勝ち越した豊昇龍、廻しを引いたら抜群に強いのに、がっぷり四つの四つ具合がヘタだ。廻しを引くのと、四つに組み止めるのは微妙に違う。今のところ大物食いだが、大関以上の匂いが薄くなった。がっぷり四つが、思った以上に強くなっていない。

今日が23歳の誕生日だったようだけど、朝青龍の23歳の誕生日は横綱4場所目で、4回目の優勝を果たしている。もちろん豊昇龍はレスリング出身で、朝青龍とはスタートが違うけどね。

廻しを引いて強いし四つ具合も巧くなったのが、豊昇龍に勝った霧馬山。千秋楽も話題に上ったことだけど、若元春戦の立合いでの不細工な変化と、隆の勝戦の魔訶不思議な外掛けでの2敗が印象に残ってしまった。

負けに不思議の負けなしとは言うものの、それでも10勝5敗という地力は大したもの。霧馬山が若隆景のように根気強い相撲を取っていれば、というか来場所は取ってくれ。

琴ノ若も千秋楽、私が推すとブログに書いていた若元春に圧勝した。しかしなぁ、両差しでの出足だからなぁ。スケールの大きさは感じないし、強さよりも巧さが先に来る。来場所に期待。

千秋楽のテレビ中継で、序二段と序ノ口の優勝決定戦を見ることが出来た。序二段優勝の琴手計、琴勝峰よりもスポーツ選手として引き締まった、将来有望な顔をしていた。琴勝峰の方が、ゆったりとした顔付きかな。

顔は生まれつきのものだから、それを言うのは良くない、ってことは無いだろう。スポーツに対する姿勢も、闘争心も、スポーツ頭も、全部顔に出るし、成長すれば顔も変わる。顔付きだけではなく、体付きも相撲振りも、琴手計は兄を超えるかも。

兄と言えば、休場中の兄の大賀が心配な丹治は、序ノ口の優勝決定戦に出場。これまた、良い面構えをしている。15歳の丹治は22歳の相手力士に、外連味なくぶつかっていった。これも先々、楽しみ以外の何物でもない。

大相撲力士名鑑 : 照ノ富士




砂かぶりの夜

2件のコメント

  1. 現在番附の差はあるが、若隆景・豊昇龍・霧馬山は実力差はほとんどないと見ている。現在の3大関を全部とっかえろ、とは言わないが、この3力士が大関に上がって照ノ富士と対戦してほしいと願う。
    >>(霧馬山)隆の勝戦の魔訶不思議な外掛け
    これなあ。豊昇龍も幕下の頃やってたと記憶するが、魔訶不思議というより絶対決まらない無駄な技だ。自分も相手も大ケガする危険性がある。きっちり指導してほしい。
    序ノ口の優勝決定戦に出てきた「足取り怪人」山藤が面白い。彼も琴手計や丹治と同じ兄弟力士(兄は三段目翠桜=すいおう。兄のほうが改名した)で、アマチュア相撲のキャリアも十分あるが、とにかく相手が誰でも足を取りにいく。どこかで壁にぶつかるだろうし、いずれは正攻法にシフトしていくんだろうが、それまでは足を取りまくってほしい。

  2. shin2さんへ
    コメント、ありがとうございます。
    若隆景・豊昇龍・霧馬山は、照ノ富士が元気なうちに大関に昇進して、優勝争いをして欲しいものです。豊昇龍と霧馬山には、まだまだ求めるものがありますので、勝手にブログで書いていきます。
    山藤は見てましたが、すべて足取りなのでしょうか。すべてだとすると、突き押し相撲ならぬ、足取り取り相撲ですね。最初から最後まで、足を取れるか上から潰されるか。体付きは昔の幕下力士みたいでしたね。

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