荒勢

もみあげとタイコ腹とがぶり寄り、 連想ゲームの答えは荒勢





178cm・151kgの固太りのタイコ腹、その体を利した迫力満点のがぶり寄りが十八番。琴風や琴奨菊のがぶり寄りとは少し違う、力感溢れる上半身で廻しを引き付け相手を前後に揺さぶるような豪快ながぶり、それが荒勢でした。

不適な面構えに太い眉に、もみあげが似合い、野武士のイメージを漂わせていました。大関に近づいたときもありました。昭和52年秋場所、小結で2場所連続勝ち越しで東関脇で迎えたこの場所、3大関を破り11勝4敗で技能賞を獲得します。

そのがぶり寄りを評価されての技能賞でしたが、野武士的イメージそのままどこか勝負に淡白なところもあり、大関獲りの雰囲気は薄かったですね。立合いに突っかけることも多く、太い眉ともみあげがユーモラスに見えることもありました。

その開放感のある土俵は、高見山と双璧でした。廻しを引きつけてのがぶり寄りもケレンミ味がなく、貴ノ花や旭國といった粘りのある力士との対戦は互いの持ち味がでた相撲となりました。

日本大学の先輩だった輪島と同じ花籠部屋。輪島にがぶり寄る荒勢も見てみたいと思いながらも、あの立合いの感じから荒勢は実は気が小さそうで、先輩の輪島には弱かったでしょうね。

引退後はタレントに転向、その太い眉ともみあげはさらにユーモラスに映りました。今から30数年前、私の大学の近くの海岸沿いに、花籠部屋の九州場所の宿舎がありました。その宿舎の2階の部屋に荒勢を見つけ、「あっ、荒勢だ!」と私は叫びました。(当時、学生でしたから)

荒勢は、しばらく無表情で外を眺めていました。一瞬、目が合ったような、むしろこっちを見ていたような・・・。その宿舎のあった海岸沿いも、今では埋め立てられて市街地となり、ソフトバンクホークスの本拠地ヤフオクドームを初め、巨大な建造物が立ち並びます。時は流れます。




力士名鑑 : 荒勢

 

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