玉の海 北の富士

「土俵の神々」を見てから書いていたら、話は 貴ノ花 から 玉の海 へ





BS日テレで、「土俵の神々」というのをやってました。力士の平均体重が130kgぐらいですね、貴ノ花が活躍していた時は。それでも貴ノ花は110kg無いわけですから、吊りを得意にしていたのは大したものです。

得意にしていたというか、インタビューで、「私の相撲はブサイク。組んで寄って吊ってしか出来ないんですよ」と語っていましたが、その不器用な真っ向勝負が共感を呼び、驚異の粘り腰と根気強い相撲が感動を呼びました。

吊り出しと打っちゃりが減ったと何回も書いていますが、貴ノ花の番組を見てしまったので、今回はさらに強めに書きます。言うまでもなく、ここ最近で急に悪くなったということではありません。貴ノ花の時代と比べてのことです。

打っちゃりが減っているのは、当然その必要条件である寄り倒しが減っているからです。寄り倒しが減っているのは、土俵際で無理に残す力士が減ったからです。なぜ無理に残さないかというと、残せる腰を持った力士が減ったからです。四つ相撲の力士が減っているのも、原因の一つです。

若乃花が言っていたのは四つ相撲で、「最近は、アゴを使わない」と。体のあらゆる部分を使って相手の重心を崩す、これが相撲というもの、という内容でした。たしかに今の四つ相撲は、廻しの引き付けに重点が99%と感じます。

体重増加は、土俵際での粘りを減らし、押し相撲を増やし、四つ相撲での廻しの引き付けを重視、と以上のことを起こしていると思います。ここで突然ですが、玉の海の写真です。

玉の海

右四つの正しい型を持った本格派横綱と呼ばれた玉の海、左上手も脇ミツの位置を引いているようです。まず一つは、大鵬が187cmに対して玉の海は177cm。最近は身長で10cm以上違えば、がっぷりはするべきでないという感じがあります。

次に二つ目、大鵬が上手を欲しがっているにも関わらず、玉の海は右足を前に出しています。当たり前といえば当たり前ですが、この状況で今は逆足の力士が増えました。

もちろん玉の海は肩幅が広いという点もありますが、一番は胸の合わせ方が巧かったと思います。これに柔軟極まる強靭な足腰があって、双葉山の再来と呼ばれた四つ身は完成しました。次に、吊り出しの写真です。

玉の海 北の富士

まさに、目よりも高く吊り上げていますね。北の富士との幕内初対決の一番、このとき玉の海は100kgもなかったと思います。本来の右四つではなく、そのうえ上手はとっていません。注目してほしいのは、右は廻しを引かず、小手のまま吊り出していることです。廻しの引き付けではなく、本当に腰で吊っているわけです。

また、そういう風に自由に育てた親方も素晴らしいと思います。ガダルカナルで九死に一生、金色の廻しの玉乃海です。まだ、大相撲力士名鑑には書いていませんが。

若乃花もVTRを見ながら、「自分たちも、この時代の方たちに教えてもらった」という話をしていました。出演していた草野さんもいってました、「私たちは、こういう相撲を見たいんです」・・・私もです!!

大相撲力士名鑑 : 貴ノ花 玉の海

大相撲 幸運ブレスレット




砂かぶりの夜

9件のコメント

  1. >残せる腰を持った力士が減った
    とありますが、能力の問題というよりは「無理に残す力士が減った」という可能性もあるかと。
    潜在的にはできるがやらない力士の増加ですね。

    平均体重が増加して怪我を負うリスクは上がっていそうなのにもかかわらず、平均寿命はそれと反比例するように上昇傾向にあるように思われます。

    フィジカルケアの発達もあるのでしょうが、土俵際で無理をせず、怪我の危険を回避する。
    そういった意識が寿命の延びる一因になっているのではないかと考えます。
    太く短くよりも、それなりに長く。
    「サラリーマン力士」的と言えばよろしいでしょうか。
    もちろんただの推測でしかないですが。

    仮にこの推測通りだとしても、あまり力士を責める気にはなりません。
    (興行だから魅せる相撲を取るべきという意見はあるにしろ)競技者の側面がある以上、力士は勝つことを目指すのは当然です。
    安易と言われようと、体重が武器になるのなら増加の一途を辿るのも自然な流れでしょう。
    体の差を心技で覆せるのは一部であり、また心技が同じなら体が勝る者が有利なのは疑うべくもありません。
    結果として正統派の吊りやうっちゃりが消えたとしても、相撲のルールや土俵という環境に力士が適応した結果だと思います。
    競技としての成熟と面白みは必ずしも一致しないものなのでしょう。

  2. 鷹乃華さんへ
    コメント、ありがとうございます。
    土俵際に関しては土俵には高さがありますから、土俵中央の浴びせ倒しと違って、倒れるときに足も抜きやすいので、ケガをするリスクは低いと思います。もちろん無理をしない方が、リスクはさらに減りますが。

    体重に関しては、確かに勝つために太るというのは大切なことです。心配なのは、太ると稽古で息が上がるのが早くなるだろうということです。そこを克服して番付を上げていくわけですから、力士は凄いですね。

    興行として見せる相撲という部分では、特に栃錦・若乃花が若いころは戦後間もなくで、大相撲自体が存続するのか不安だった時代で、お客さんの入りを意識しての相撲が多かったのも確かです。吊り出しにしろ打っちゃりにしろ、そういう状況から多かったのも事実だと思います。今、基本の寄り切り・押し出し・突き出しが増えているのは、良い時代なのかもしれません。

  3. 安美錦があの「脚の半分以上を覆うサポーター」を装着し始めたのはいつの頃からだろう。
    個人的に「安美錦サポーター」と呼んでいるんですが、春場所の何日目か失念したが、幕下の取組で花道が映ったとき、この「安美錦サポーター」を装着した力士が3人ぐらい並んでいたので、仰天した。
    たぶん膝の靭帯損傷または断裂→3場所程度全休して序二段序ノ口まで番付落とす→「安美錦サポーター」装着して幕下まで復帰、というパターンなんだろうが、力士が取組中に付けるテーピングやサポーターは無制限でいいのかと考え込んでしまう。
    もちろん相撲にケガは付き物だろうが、白鵬や稀勢の里は休場は少ない。体質的なものもあろうが、公傷制度も含めて検討は必要だろう。
    あと「最近の突き押し相撲、むしろ引き叩き狙いが多い問題」(個人の見解です)とかあるんですが、長文になったので、ここまでにします。

    1. shin2さんへ
      コメント、ありがとうございます。
      サポーター類も開発されているのでしょうね。昔は手首や足首も包帯をサポーター代わりにしていたり。白鵬や稀勢の里など、体の柔軟な力士はケガが少ないし、またケガに強いのでしょう。ヒザといえば琴風を思い浮かべますが、琴風も付けるものは最小限だった記憶があります。

      引き・叩きねらいの突き押し相撲。若い力士でそういう相撲をしていると、あまり上位には定着していないという印象ですね。たしかに、そういう力士が多くなっています。引き・叩きが少なめの突き押し相撲は、大栄翔あたりでしょうか。ベテラン力士で、もうそれが一つの得意手になっている力士は、その力士の味と言えるかもしれませんが。夏場所は大栄翔がどこまで突き押しに徹するか、楽しみにしております。

  4. すも吉さんへ
    コメント、ありがとうございます。
    貴ノ花は一門の稽古で、玉の海に相撲を把握されていたのでしょうね。玉の海と北の富士、大関時代から安定感とムラはそのままでしたが、北の富士は足の長い、力士として不利な体型を、独自の速攻相撲で乗り越えて横綱になった力士でした。守りは弱かったですね。

  5. 北の富士と貴乃花の取組で有名な付き手、かばい手の論争また、勇み足、送り足の差し違えで木村庄之助が引退してしまう程、貴乃花の足腰は行司泣かせでしたね。

  6. すも吉さんへ
    コメント、ありがとうございます。
    「もう一つの魂が宿る」と言われた足腰でしたね。高見山とも、何度か土俵際の際どい相撲がありました。見応えのある相撲をとらせたらナンバーワンでした。

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