宇良

今の 阿炎 なら 照ノ富士 も危ない、そして 宇良 の肩透かしは美しい





一年納めの九州場所も最終盤に入った13日目、貴景勝VS阿炎の大一番は阿炎に軍配が上がった。完勝だった。阿炎の一発一発は的確に貴景勝を捉えていて、貴景勝が動いていく方向に力のベクトルを微調整するようにさえ見える、見事な攻めだった。

貴景勝の突き押しの特長は引き手の速さ。回転の速さとはちょっと違う、直線的な引き手の速さ。だから次の一手が速く、その間合いでの突き押しを繰り出されると、相手は徐々に追い詰められる。

しかしその間合いは、阿炎のリーチで完全に封じられた。一発一発が的確で威力があるから、貴景勝は何も出来なかった。勢いとか運とかタイミングではなく、完全な力負けだった。次の場所でも勝てないだろうな、と思わせるほどの負けっぷりだった。

勝負どころは貴景勝の左からの突き落としが効くかどうかで、実際のところは効いていたようだったけれど、阿炎はこの局面を厳しい攻めで切り抜けた。足の運びの良さが際立っていた。

いよいよ14日目は照ノ富士VS阿炎、今日以上の大一番だ。阿炎のリーチと、照ノ富士の廻しの勝負だ。照ノ富士がいつもと同じように廻しを欲しがると、阿炎の相撲の流れになるかもしれない。

まずは阿炎の突き押しに応戦して、それからの勝負、と思う。安易に廻しを探りに行くと、今場所の阿炎には照ノ富士でも持って行かれるだろう。気づいたら土俵際、そしてその可能性は高い。

ところで今場所の宇良、言うまでもなく肩透かしで透かしまくっている。大きい逸ノ城にも決めたのだから、これはもう必殺技と言えそうだ。逸ノ城はさすがに手を付いただけだったけれど、肩透かしは決められた力士が裏返ることが多いから良い。

最近、引き技がよく決まることに対する批判が多いが、一つには引き技が決まったときのガッカリ感が強いからというのがある。バッタリ、「ア~~ア」の感じ。

しかし肩透かしは見事に引っ繰り返ることが多いから、「オ~!」となる。普通の引き技ではない。投げ技だ。やはり派手な技が決まると美しいし、うれしい。昭和の相撲を語るとき、吊り出しや打っちゃりの話がよく出るのは、技が派手で美しいから、というのが正直なところだ。

宇良の肩透かしは昭和の業師全盛期の、初代栃東の上手出し投げにも匹敵する見事さだ。令和には令和の、美しい技が現れる、という締めでよろしいでしょうか。

大相撲力士名鑑 : 阿炎 宇良




砂かぶりの夜

2件のコメント

  1. 逸ノ城戦の宇良の肩透かしは、逸ノ城の左肩関節に全体重をかけて決めた。「決めた」というより「極めた」という表現が正しいか。肩透かしが関節技だ。九日目、碧山に右腕を極められたが、逆に肩透かしで極め返した。翠富士の肩透かしはスピードで決めるが、宇良は200キロクラスの大型力士でも力で極める。
    その宇良に何もさせずに吹っ飛ばしたのが阿炎だ。宇良は立合い突っ込んでこないが、阿炎は気にせず突っ張って宇良の回り込みを封じた。宇良以外にも立合い仕切り線から下がる力士がいるが、前に出るのが最高の対策だとわかった。
    照ノ富士は廻しが取れなくても、阿炎の長い腕を抱え込んで動きを封じたいだろうが、今場所の阿炎ならその前に土俵際まで持っていきそうだ。初顔合わせ、というのも阿炎に有利か。

  2. shin2さんへ
    コメント、ありがとうございます。
    宇良の肩透かしは、宇良の代表的な決まり手になるとともに、令和初期の決まり手を語るうえでも欠かせないものになりそうな、少し大袈裟でしょうが、そんな歴史的な決まり手になるかもしれません。照ノ富士と阿炎は、これからも熱戦を見せてくれそうな、そんな内容でしたね。

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