もう何年前のことだったか定かではないけど、大相撲好きの友人で、また日本人力士好きでもあった友人に、「次の日本人力士の横綱候補は誰かいますか?」と問いかけられました。
そのとき私は稀勢の里と豪栄道の話をしたわけですが、その友人は「豪風なんかは、どうですか?」と訊いてきました。私は彼の意見を尊重しながらも、しかし「豪風は身長が170㎝ぐらいですから」と答えました。友人は、「170㎝!」と驚き、しばし絶句したのでした。
大相撲は輪島と北の湖の対戦が好きだったが、その後はあまり詳しくはないという友人の目に、豪風はあの体格で顔も大きそうだから、大きく見えたのでしょう。たしかに豪風の体付きで身長がもっと有ったら、それこそ綱が似合うフォルムをしております。
体は38歳とは思えない充実ぶりですが、豪風は筋トレにかなり詳しいとのこと。何度かコラムで書いてますが、私は力士の筋トレ偏重には反対なのですが、豪風のタイプの相撲の型には合っているのかも、とも思います。ここまで実績を残しているわけですから。
そう考えてから目を凝らすと、豪風のいなしや突き落としは、例えば富士櫻や鷲羽山を思い浮かべると少し違う気がします。柔らかさと速さで、ギリギリのタイミングでかわすのではなく、パワーで距離を作ってかわしていく感じ。
このタイプとしては珍しくスピードを感じさせない、しかしそのパワーとともに、ベテランとして巧さが加わった、豪風独特の相撲の型。オールラウンド型の力士が増えた昨今、貴重な存在のベテランです。
身長から比較すれば舞の海や智ノ花といった小兵力士となるかもしれませんが、小兵力士としての幕内在位数ならば飛び抜けています。現在では琴錦や安芸乃島のような、大関を狙えた力士の幕内在位数レベルに近づいている豪風。嘉風も。
170㎝そこそこといっても、体格は立派。小兵の曲者というイメージではないし、というか金星の最年長記録の時点で、曲者というよりも正攻法。一発があるわけではない力士。
従来の突き押しの力士のイメージとも、ちょっと違う。富士櫻から千代大龍へ、時代の変化のグラデュエーション。・・・変な文章だ。突っ張りよりも押しの方が中心だから、富士櫻よりも大受か。しかし、似た力士が見つからないというのは貴重な存在、40歳過ぎまでいけそうな予感もしてきます。
豪風が入門2場所目、勝ち越しを決めた勝利の後、花道の奥で報道陣に囲まれたが、170㎝しかないためテレビカメラに姿が映らなかった記憶がある。
失礼ながら「学生横綱もレベルが下がったか」と思ってしまった。私の目が節穴だった。
やはり170㎝前後で、昭和50年代後半に活躍した栃剣という力士がいた。
ちばてつや氏の漫画「のたり松太郎」の名脇役「田中くん」のモデルとされる。体重で100㎏以上上回る小錦を蹴返しで破ったこともある。突き刺さるような立合いからの突き落としが印象に残る。
豪風の体重は栃剣を上回るが、スピードは栃剣のほうが遥かに上だった記憶がある。ただ力士としての実績は豪風が上だ。
2017年なら150㎏でも小兵力士だろうが、たまに豪風が変化技で勝つと微妙な空気になるのが不思議だ。「小兵」のイメージがないのだろうか?
shin2さんへ
コメント、ありがとうございます。
突き押しと突き落としを得意にしている力士としては、金星の最年長記録で、つまり横綱には今まで弱かったということ。突き押しと突き落としの正攻法力士というのは、以前の富士櫻や若い頃の朝潮が横綱を食っていたイメージにつながりません。170㎝そこそこで小兵力士とも言えない体は、やはり今までの力士のイメージにはありません。本文中で二度も「貴重な存在」と使って、後から気づきました。