栃ノ心、初優勝、ただただ感動です。そして多くの大相撲ファンも感動したと思います。大相撲の最大の醍醐味である、廻しを引き付けての力感あふれる栃ノ心の力相撲。このブログのタイトルそのままで恐縮です、栃ノ心に「今日の一番も、大相撲になりました!」と伝えたい。
私が最初に栃ノ心のコラムを書いたのは、もう10年前の2008年の2月、昔の貴ノ花のインタビューを引用したものでした。「私は人よりちょっとだけ残り腰があるだけで、廻しを引いて寄るか吊るだけの、不細工な相撲なんですよ」という言葉。
このコラムのとき、栃ノ心は新十両でした。私は当時すでに少なくなっていた「不細工な相撲」を、武骨に吊り寄りで攻める、この新十両力士に感じました。栃ノ心は大相撲史上最大級の支持を得た、貴ノ花の「不細工な相撲」を私に想起させたのです。
このときのコラムのタイトルは、「真っ向勝負の相撲をとる、栃ノ心は不細工な二枚目です」。「二枚目です」と締めた理由は、栃ノ心がニコラス・ケイジに似ていることに触れているからです。たぶん、日本で初めて、栃ノ心がニコラス・ケイジに似ていると書いたのは私でしょう。(だから、何?)
それにしても本当に、ここまで本格的な連日の力相撲を、久々に見たのでは?特に若い大相撲ファンは。貴ノ花を知らない人も増えているでしょう。そんな若いファンでも、たぶん体が思わず動いてしまうような相撲、これぞ「大相撲」と感じたことでしょう。
見応えのあった取組の後でアナウンサーが言う、「今の一番は攻防がありました」、これではダメなのです。取組中の、その最中に「大相撲になりました!」とアナウンサーが絶叫してこその「大相撲」なのです、と断言します。
もちろん、栃ノ心は技術的にも変わりました。突っ張りも威力を発揮しました。四つ相撲の力士にとって、これは大きな武器です。かつて琴欧洲も、「突っ張りは本当に難しい」と語っていました。
曙や武蔵丸、高安のような筋肉の力士に突っ張りを得意とする力士はいても、筋肉の付き方が琴欧洲や栃ノ心タイプで突っ張りの巧い力士は少ないはずです。それを栃ノ心、よく突っ張りを身に付けたものだと思います。
平幕優勝が何年振りとか・・・それよりも、この優勝が次につながる優勝だと大相撲ファンは感じていると思います。今までの平幕優勝とは違う、大きな期待感を抱かせるものだと。
もう一つ、書いておきたいのは高安。外四つや突き落としなど、はさみつける相撲が多かった高安には、あの熊のような体で抱きつくように、内側から攻めてほしいと思っていました。
最後に鶴竜が嫌がって引き技を見せたので不完全な形でしたが、高安の体の寄せ方は素晴らしかった、立合いからの一連の流れも含めて。今場所の高安は相撲内容が変わった、というか特に後半戦は抜群に強かった。これは本当に、綱を意識できるぐらいの相撲になったと。
14日目は遠藤・逸ノ城・竜電も白星を並べ、来場所の関脇以下の充実も目を見張るものがあります。今場所苦戦の若手力士も奮起するでしょう。いよいよ新しい世代闘争が始まる、その幕開け前夜の栃ノ心の初優勝です。
栃ノ心、右四つがっぷりでガルルル吼えながら「力相撲」で勝つワンパターンの力士と思っていたが、玉鷲戦では両差し、逸ノ城戦では相手の左上手を切って、松鳳山戦では左四つで勝った。こんなに相撲の幅がある力士とは思わなかった。優勝おめでとう。
「カチ上げ」というのは、大鵬でも北の湖でも、片腕だけでやるものだと思っていたが、高安が両脇を固めて体ごとぶつかっていくのもカチ上げなんだろうか?(NHKでは「体当たり」と実況していたが)それなら千代大龍もカチ上げマスターだ。
ウィキペディアの「かち上げ(相撲)」によると、
>>近年の相撲雑誌でもかち上げについて「顎や喉を狙う」とある媒体が見られる。
とあって、『大相撲ジャーナル』2017年8月号特別付録 相撲用語&決まり手図解ハンドブック p2が例示されていた。
どうも朝青龍・白鵬以降「カチ上げ」の意味が変わってしまったようだ。白鵬の張り手・カチ上げを制限する前に、正しい「カチ上げ」を明らかにすべきではないか。
カチ上げについて長くなってしまったが、鶴竜の10連勝4連敗は「横綱復活」と解釈していいものか。進退の判断基準がわかりにくい、という意見もあるが、あまり明確にすると昭和33年の「鏡里、10勝できずに引退」という後味が悪い結果になるからなあ。
shin2さんへ
コメント、ありがとうございます。
栃ノ心、千秋楽も右からの攻めが光りました。上手からの力の攻めだけでなく、差し手からの起こしと体の寄せが見事でした。そして高安、カチ「上げる」よりも当たった衝撃を重視しているようなカチ上げですね。体当たりの方が、その目的に合った名称かもしれません。しかし「体当たり」という言い方は相撲ではなく、プロレス的ですね。というか「体当たり」という相撲の立合い自体、新しい技術となるのでしょうか。何か、ややこしいですね。