大栄翔

大栄翔 の優勝は今の流れの象徴かな、そして大相撲の歴史へ 翠富士





大相撲1月場所は大栄翔が初優勝。埼玉県出身力士初の優勝という取り上げられ方は、「故郷に錦」という大相撲のイメージに合っていて良い。後半は少し疲れが見えていたが、千秋楽の相撲は素晴らしかった。

突き押しの相撲は見事だったが、アナウンサーが北の富士に対して、北勝海との比較みたいな話を振っていたが、それは少し無理がある。大栄翔にも四つ相撲はあるが、北勝海と比べると腰が軽い。千代大海に近い。それに北勝海の四つ相撲は、凄いしぶとい相撲だったし。

もちろん、大関候補と呼べる存在にはなった。正代や朝乃山に拮抗するだけの力をつける、可能性は充分にある。そして大栄翔の優勝、貴景勝の休場、御嶽海の三大関連破、これは今後の土俵の風景を予感させるものでもあった。

もっとも思うのは、今の力士は少年相撲から始めて中学・高校と続けて、そして相撲留学もある。だから同学年はもちろん、先輩後輩も含めて顔を知っていた状況で入門する。だからたぶん、昔の力士に比べて、番付負けするような感覚は薄くなっているだろう。

ってことは、大関と関脇の距離も縮まってくるだろう。大関陥落の可能性も増えるだろうが復帰も増える・・・そこまでいかなくても、それに近い感じにはなるのではないか。逆に大関から横綱への道は、これまで以上に険しくなるのではないか。

プロ野球も、リトルリーグや野球留学などで子供のときから顔見知り、って時代になっている。だから昔のような乱闘劇は見られないし、一塁ベースで一塁手と走者が談笑したりしている。ピッタリの例えじゃないけど、雰囲気は近いか。

第73代横綱が現れるには、もう少し時間が掛かりそうだ。しばらくのところ、今の流れかな。結局は、特別な存在が現れないと、特別な場所(横綱)には辿り着けないという、当たり前の結論。

「相撲は番付で取る」という切り口ではなく、純粋に土俵の充実という点では大栄翔のような、これぞ正統派突き押し相撲の出現はうれしい。独特のスタイルの貴景勝とのコントラストも面白いし、権化千代大龍との取組も興味深い。

そして土俵の充実という切り口で言うと、今場所は翠富士が一番。肩透かしばかりが目立ったが、私が感動したのは妙義龍戦だった。琴恵光戦で肩透かしに行こうとしたところを、一気にあおられて負けた相撲があった。妙義龍にも同じような形で出られたが、ここで翠富士はすくい投げを決めて見せた。

差し手で相手の重心を下に持って行く技から一転、差し手で重心を浮かせる技への切り替え。運動神経と冷静さと、お見事。これで翠富士の肩透かしが、もうワンランク上の得意技となった、と思う。只者ではない、翠富士。

小兵が活躍していると度々言われる近年の土俵だが、ハッキリ言って三役になって初めて、本当に小兵力士大活躍と、大袈裟だが大相撲史に残せると思う。翠富士、そして宇良。

大相撲力士名鑑 : 大栄翔 翠富士




砂かぶりの夜

2件のコメント

  1. 50年ぐらい前の新弟子は、四股名は横綱しか知らないとか、プロ入りして初めて廻しを締めたとか、始めは兄弟子が勝たせてくれたけれど、やがて全然勝てなくなったとかのエピソードが定番だった。
    もうアマチュアで実績を積んだ選手が大相撲に入門するのが定跡となった。「高校相撲出身者は大相撲では出世しない」ジンクスも消し飛んだ。

    翠富士は「攻撃的肩透かし」を開発した。相手の攻撃を受けて苦し紛れの肩透かしとは全く異なる。差して前に出ての肩透かしとか、すくい投げに転換できる肩透かしは「カタスカシスト」(誰も呼んでないか)の名にふさわしい。
    宇良は序盤は突き押し相撲に徹しようとしていたようだが、後半は足取りや反り技も出してきた。10勝してもコロナ据え置き力士に番附上昇を妨げられそうだが、早く幕内に上がってほしい。

  2. shin2さんへ
    コメントありがとうございます。
    アマチュア相撲は、もちろん盛んになってもらった方がよろしいのですが、たまにソップで怪力って感じの力士が現れてもなぁ・・・と思いますね。今、千代の富士や霧島のような力士が現れたら、大変な盛り上がりになりそうですが。
    「カタスカシスト」・・・「スガシカオ」みたいで格好良いですね。肩透かしは引き技の部類かな、と思っていましたが、翠富士を見ると、投げ技なのだと判断すべきですね。

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