麒麟児 は大関候補だったときもあって、そして解説は若々しかったな





昭和の名勝負として度々取り上げられる富士桜戦、これが麒麟児の一番のイメージだったと思う。もちろん私も、リアルタイムで記憶に残っている大一番だった。

突き押し相撲の代名詞的存在のように思われているだろうし、今回「四つ相撲になったら三段目」といった記事も見つけた。これは間違いだ。麒麟児は現役時代、四つ相撲なら三段目などと呼ばれたことは一度も無い。

これは、麒麟児に失礼だ。四つになったら、それほど強くなかったのは確かだけど、幕内力士相手に勝つこともあった。だから、イメージとは違う、リアルタイムの麒麟児の記憶を書いておきたい。富士桜戦の印象が、強烈過ぎるからね。

「花のニッパチ」は、後のサンパチやゴーイチといった「花の~」と称した、たぶん最初だったと思う。北の湖、大錦、さらに若乃花が現れたが、麒麟児の台頭で初めて「花のニッパチ」が形成された、と思う。

突き押しのスペシャリストであったことは間違いないが、もっとも書いておきたいのは、麒麟児は大関候補だったということだ。少なくとも、私はそう思っている。

だって、十両優勝して、21歳で新入幕。そこから負け越し知らずで、前頭筆頭で10勝5敗。そのまま三役で4場所連続勝ち越しで、そのとき22歳。年間で三賞を4回も貰っている。

残念ながら関脇で連続勝ち越しは、この22歳のときが最初で最後だった。私は中学生だったが、大関に行けそうな、そんな記憶がある。若羽黒を見ることに間に合わなかった私は、突き押し大関誕生を期待した。

実際のところは体もそれほど大きくなく、三役定着とは行かなかったが、一瞬でも大関候補と感じさせた力士だった。それに引き技も、ほぼ使わなかったし。今の力士みたいに、引き技を磨いていたら、どうなっていたかな。

引き技がほぼ無かったってことを、何か突き押し相撲の美徳のように語られているかもしれないが、当時の突き押し相撲の力士は、引き技が上手じゃなかったっていうのが正解だろう。引き技で印象に残っているのは、海乃山や藤ノ川や鷲羽山のような小兵力士だ。

突き押し相撲で引き技が上手だった最初の力士は、「大ちゃん」の4代目朝潮じゃないかな。引き技が巧い学生相撲出身というのが、今につながる部分がある。

だから、本当に真っ正直な力士だったと、やっぱり麒麟児を一言で表せば「真っ正直」。富士桜も引き技は少なかったはずだが、富士桜は大工の棟梁みたいな風貌だったし、頑固者ってイメージ。麒麟児は童顔で、負けたときの切なさが「真っ正直」ってイメージだった。

そんな麒麟児だが、引退してNHKの大相撲解説者になってからは、その弁舌の爽やかさ、軽やかさには驚かされた。大相撲中継じゃなくて、夜9時のニュースの時間が多かった。

大相撲の解説と言えば玉ノ海梅吉や神風のような、ご意見番、喋り口調もクセが強そうな、それがスタンダードだった。それが、いかにも好青年然とした爽やかさ。説明も丁寧だった。あんな解説は、その後は見ていない。

数年前から体調が悪いのは、画面を通しても分かっていたが。若々しくて、ピチッとした髪型で解説してた映像が今でも目に浮かぶ。しかし「真っ正直」とか、「好青年」などと書いたが、私よりも7歳も先輩だったのだ。合掌。

大相撲力士名鑑 : 麒麟児




砂かぶりの夜

2件のコメント

  1. >>昭和の名勝負として度々取り上げられる富士桜戦、これが麒麟児の一番のイメージだったと思う。
    この一番、激しい突っ張り合いの最後は上手投げで麒麟児が勝った。麒麟児は廻しを取って相撲が取れた。逆に富士櫻は全く四つ相撲は取れなかった。
    ただ、この名勝負数え歌、最初はいつも突っ張り合いから始まった。輪島vs北の湖がいつも左四つがっぷりから始まったことを思い出す。ともに昭和23年生まれvs「花のニッパチ」の対決で、若いニッパチの麒麟児・北の湖が対戦を重ねていくうちに有利になっていった。
    >>突き押し相撲で引き技が上手だった最初の力士は、「大ちゃん」の4代目朝潮じゃないかな。
    その前に舛田山がいた。ケガに苦しめられて引き技に頼る相撲にチェンジしたが、横綱千代の富士を引き落としで破った。現在の「突き押し引き叩き相撲」の元祖だろう。
    舛田山は70歳の誕生日で再雇用期間を満了し、2歳下の麒麟児は亡くなられた。富士櫻は元気だろうか。あの回転の速い突っ張り合いが現役力士で見られることがあるだろうか。

  2. shin2さんへ
    コメント、ありがとうございます。
    そうですね、舛田山ですね。やはり学生相撲出身力士が、引き技の巧い突き押し相撲力士の元祖的存在なんでしょうか。一日に何回も戦うトーナメント戦に、引き技は有効だったんでしょう。

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