白鵬

白鵬 の張り差しとカチ上げの歴史を知ってから、「横綱らしくない」とか「品格」とかの話でしょう





白鵬が最初にカチ上げを放ったのは2012年の秋場所、もう6年近くも前のこと。6年近く、不問だったわけです。張り差しは入幕した頃に、すでに魁皇や武双山といった大関相手に、バシバシやっていました。

張り差しについては、「格下の力士が目上の力士に張り手が出来ないことを良いことに、白鵬は好き勝手にやっている」という言い方を目にしますが、白鵬は平幕の頃、初顔合わせのときから目上の魁皇・武双山に張り差しをかましていました。

結局は目上とか格下とかの問題じゃなく、出来る足腰があるかどうかの問題なわけです。まぁ、それは置いといて、当時は朝青龍の独走時代、若手の白鵬は何をやっても「白鵬、ガンバレ!」の状況でした。

言ってみれば、朝青龍も張り差しをしていたわけで、そして朝青龍は立合いのバリエーションの多さを、むしろ称賛されていたフシもある。力士の重量化が進んだ時代に、体格で劣る朝青龍の張り差しは「横綱らしくない」とはならなかった。

かつて北の富士と三重ノ海が張り差しをしていた記憶がありますが、両横綱ともに左四つからの速攻が持ち味、右四つでは相撲がとれないという共通点。北の富士は張り手というよりも、右手を出して相手を牽制する感じ。三重ノ海も、輪島以外にはそんな感じ。輪島に対しては恐ろしかったが。

という流れの中で、朝青龍一人勝ち(それも圧倒的な)の土俵に現れた白鵬に、張り差しがどうのこうのと言われるわけがない。早く朝青龍に追いついてほしい、それだけ。とにかく、憎たらしいほどに朝青龍は強かったから。

そして2012年の秋場所になるわけですが、相手はたしか妙義龍でしたね。その場所は横綱になって初めて、3場所連続で優勝を逃す場所となります。白鵬にとっては、厳しい状況でした。

さらに言うと、この年の春場所に白鵬は優勝していますが、私は白鵬の立合いを「思い切り踏み込み過ぎて、スキが出来ている。小さく踏み込んで、がっちりと受けていた立合いが出来なくなったのか?」と当時のメールマガジンで書いています。

白鵬の立合いと、相撲内容も迷走していたころ。そしてこのカチ上げの翌場所から白鵬は立ち直り、第二次黄金時代が始まったわけです。それでは、このカチ上げを最初に見たとき、どんな印象を覚えたか?

妙義龍は一発KO、脳震盪を起こしたようにフラフラでした。これは衝撃的でした。その破壊力への衝撃だけではなく、立合いに張ってからカチ上げるという二段の動作を出来る白鵬の動きに対する衝撃もありました。

この立合いから白鵬の第二次黄金時代が始まったように書きましたが、実は第二次黄金時代を築いた立合いはカチ上げによるものとは言えません。立合いが良くなったのです。カチ上げの立合いは少ない。

2011~12年あたりの白鵬は肩の位置よりも、かなり前の方に手を付いて、一気に走る相撲をとっていました。アナウンサーはこの圧倒的な「速さ」の相撲を絶賛していましたが、しかし私は白鵬の相撲が乱れていると感じておりました。

そして予想通りに3場所連続で優勝を逃し、そこからの2012年秋場所でのカチ上げ。そして2013年の春場所に、白鵬はそれまでの迷いを吹っ切るような素晴らしい立合いを取り戻します。

手を付く位置を少し手前にし、鋭い立合いを見せるようになります。それからの第二次黄金時代でした。まさに白鵬の相撲が完成した、という時代。カチ上げは、あまり出していなかったと記憶しています。その黄金時代が終わるのが、2015年の秋場所。

低迷期を脱するキッカケとなったカチ上げを、2016年ぐらいから頻繁に見せるようになります。2012年と違うのは、頻繁に出し続けたところ。そしてこの2年余りの期間で、白鵬への反旗のマグマが地下でフツフツと燃え始めていた・・・巧い表現ではない。

極論を言えば、大鵬の記録を抜いたことも含めた嫉妬と、本来の大相撲ファンでない人の意見。さらに横審も言い出す。私まで三沢光晴のエルボーに例える始末、私のコラムはどうでも良いが。

今回、じっくりと検証して見ましたが、当初の白鵬のカチ上げは角度的には下から上への、本来のカチ上げと言えますね。しかし、起動のときのモーションが大きい、そして起動が速い。いわゆるバックスイング。これが従来のカチ上げとの大きな違い。

バックスイングが大きく、そして速いためにヒジが体から離れる、さらに少しずつカチ上げる角度に微妙な捻りが入るようになる。打撃の要素が高まる。すると、これが頭が低い相手に対しては、角度的にもエルボースマッシュになったということです。

カチ上げは、起動のときにヒジを体に近づけ、バックスイングをしない。振り上げるタイミングに気を付ける。本来は、これで済む話だ。そして、まずは相撲協会内で決めることでしょう。余談だが、打撃の要素が高まる形は脇も空き、重心も高くなる。三代目若乃花の思うツボ。

荒々しく見える相撲が、横綱らしくないとされ、横綱らしくないのは初代若乃花も輪島も言われたが。その「横綱らしくない」をコツコツと拾い集めて、「横綱の品格」に結びつけるから話がコンガラガル。コンガラガラそうという意図があるからか。

以上、客観的に事実関係を時系列に沿って書いてきましたが、白鵬が何時からカチ上げを始めて、何時ごろから多くなったかぐらい知ってから話をした方が良いと思ったから。

黄金時代を過ぎてから増えたことを考えると、白鵬は少し厳しくなるかとは感じますが、どう対処するかで、もう一つのドラマが見れるとも言えます。

大相撲力士名鑑 : 白鵬




4件のコメント

  1. 左の張り手・右カチ上げ(エルボースマッシュ)を同時にやってのけるのは白鵬だけだ。
    だからこその批判もあるのだろう。三日目解説の境川親方は、
    「カチ上げそのものが否定されるのはおかしいと思うんですよ。カチ上げも立派な立ち会いですから。白鵬が非難されるのはやっぱり、張って、相手の顔を止めて、制止して、そこをピンポイントで肘で狙っていくでしょ?だからカチ上げというよりも、肘打ちのイメージが強いから非難されると思うんですよ」と仰っていた。

    張り手もカチ上げも立派な立合いだ。NHKのアナウンサーは「立合いに張り差しを・カチ上げを選択しました」と実況している。品格云々は八つ当たりだ。横審委員長が相撲のルールに口出しして、それが「白鵬だけの改正ルール」になるのも不思議だ。越権行為じゃないのか。

    境川親方、アイアン親方の代わりに広報部長になってほしい。

  2. shin2さんへ
    コメント、ありがとうございます。
    技術的なことを大相撲ファン以外の人に説明するのは、かなり至難の業と感じます。特に、今回のカチ上げの件は。しかし今場所は、大相撲ファン以外の人の注目度が高いのも事実です。ワイドショーでは「人気が落ちるどころか、視聴率が高かった」という話題、それでも大相撲のSNSでは「意外とチケットは取れる」という情報も。つまり今場所は、一般の方が非常に注目しているわけです。相撲協会は、白鵬の件を誤解の無いように、テレビや新聞など一般の方の目に触れるメディアで説明する必要があるでしょうね。

  3. かち上げ論
    かち上げは全盛期の北の湖が多用していました。左肩を出すようにして立ち、立つ勢いのまま肩から上腕部を相手にぶつけてバーンと弾き飛ばすスタイルです。昭和53年名古屋場所?の富士桜戦では、かち上げ1発で富士桜を土俵下までふっ飛ばしました。この日北出アナウンサーの実況は「強いっ!」の一言でした。
    境川の解説の通り、白鵬は鋭角的に肘を当てにいくので「かち上げ」とは言えません。但しこれは白鵬だけでなく、何ら対策を講じない対戦相手も非難されるべきです。この点、嘉風の後の先立ちは見事でした。
    むしろ私は白鵬で気に入らないのは土俵入りです。不知火型なのにせり上がりの際両腕同時に広げるのではなく、雲竜型のように右腕を伸ばし遅れて左腕を伸ばすあれです。

  4. ただしさんへ
    コメント、ありがとうございます。
    たしかに、白鵬の同時に手を伸ばさない土俵入りは気になります。そしてこれは日馬富士にも言えますが、伸ばした手は下段の構えですから、手はヒザの少し上ぐらいの位置からせり上がるべきで、少し低いですね。このためか、上体も前かがみ過ぎます。背筋も、もう少し真っすぐのはず。不知火型で素晴らしかったのは、玉の海でしょう。土俵入りに関しては、常ノ花以前は素っ気ない土俵入りも見られ、徐々にファンのために見栄えを良くしていった感じはしますので、変えることに関しては絶対に悪とは言いませんが、変えて見栄えが悪くなるなら残念ですね。

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