照ノ富士

5月場所を総括すると、近年で一番、たくさんの取組が「大相撲になりました!」

大相撲5月場所は横綱照ノ富士の復活優勝、気迫の土俵だった。蹲踞もままならない状態ながらも、14勝1敗のハイレベルな成績。若元春戦や朝乃山戦など、「ここ」という勝負どころを逃さなかった取口は見事だった。その取口には、「研ぎ澄まされた感覚」というものがあった、と思う。

何日目だったか白鵬の宮城野親方が語っていた、「立合いがゆっくり見える」という、あの感覚に近いものなのかもしれない。照ノ富士も、今場所での復活に掛ける覚悟は半端ないものだったはずだから。横綱にとって負けの意味するものを、白鵬レベルに照ノ富士も感じていた、と思う。

「関脇が強い場所は面白い」という言い古された言葉が、やっぱり本当だったと再認識した5月場所、千秋楽の関脇同士の取組、霧馬山VS豊昇龍と大栄翔VS若元春も迫力ある攻防となった。どちらも1勝ビハインドの力士が勝利し、最終的に相星にするというところがドラマ。意地と気迫の勝負だった。

十両優勝の豪ノ山もまた、何も言うことはない気迫あふれる相撲だった。本割の北の若戦と決定戦の落合戦は、ちょっとやそっとじゃ見れない相撲だった。「凄かった」という一言しか無い。来場所以降も、この気迫とこの凄さを、継続してくれることを期待している。楽しみな力士だ。

決定戦で負けたけれども、落合も素晴らしかった。今回も言うけど、落合の四つ相撲は他のと違う。ここしばらく聞かない言い回しだけど、「絵に描いたような四つ身」を見せてくれる久々の力士が落合だ。

しかし決定戦の張差しは選択を誤った、と思う。あそこまで気迫にあふれた豪ノ山に、張差しは効かない。まぁ、入門から3場所目の力士が、選択を誤るなど当たり前のことだけど。ベテランじゃないんだから。

落合より一つ年上の熱海富士が一つ差で追い続け、千秋楽まで一つ差で食らいついた。体型も含めて、四つ相撲では落合に負ける熱海富士だが、前に出る馬力は見事だった。

左四つ得意で、右四つになると極めて不透明な落合に比べて、右四つ得意ながら左四つでも馬力で何とかしてしまう熱海富士。このコントラストは、これからのライバルとして相応しいものだ。絶対に名勝負が生まれるパターンだ。

そして北青鵬、後半戦は大きい相撲が裏目に出た。見てる側は勝手なもので、勝てば「スケールが大きいなぁ」となって、負ければ「大相撲を舐めている」となる。舐めてるように見えても、このままで行っちゃってください、と私は思う。朝乃山も頑張りました。

とにかく近年で一番面白く、一番熱戦が多かった場所だったことは間違いない。さらに今後の展開への期待が大きく膨らんだ場所となったことも、間違いないな。

大相撲力士名鑑 : 照ノ富士




砂かぶりの夜

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