令和5年の最初の場所は、貴景勝が優勝した。私は中日に、ハイレベルな数字の優勝でなくても今の相撲内容なら、優勝すれば横綱昇進で良いのではないか、みたいなことを書いた。気持ちは今も一緒だけれど、やはり12勝3敗だったらコンセンサスは得られないか。
それでも今場所の貴景勝の気迫あふれる相撲は、12勝の数字以上の価値があったと思う。初優勝したころの独特の突き押し相撲は見られなくなったけれど、むしろ今場所の相撲こそが貴景勝本来の相撲だと感じる。
15日間、毎日結びの一番を締める。これが横綱の務めなわけだが、締めるというのは大相撲ファンを満足させるという意味だから、これは簡単なことではない。そこで私は、合格だと思った。張り詰めた何かを感じた。
まぁ、しかし来場所はご当地の春場所でもあるし、それに12勝での準優勝と12勝での優勝で横綱に昇進したら、小錦がテレビに出て文句を言うだろうし。
そして十両では朝乃山、幕下では落合といった、近いうちに貴景勝と火花を散らしそうな力士が優勝した。だからある意味、歴史に残る場所になったと言えそうだ。もう次の場所はどうなるだろうか、なんて考えたくなるっていうのも久しぶりだ。
次の場所と言えば、横綱照ノ富士、大関貴景勝と来て、関脇には若隆景と豊昇龍と霧馬山が並びそうだ。若隆景と霧馬山は幕下のころから、豊昇龍は有名だったから高校生のころから、注目してきた力士が上位を占める。
今どきの土俵では珍しいそのスリムな体型が、三力士を注目してきた理由なのだが、その体型をほぼ維持したままナンバー3と4と5になる、と思うと、感慨深い。とは言っても、今場所の相撲内容に私は満足していない。まだ足りない。
場所に入ってすぐ、「豊昇龍には日馬富士のような相撲を」みたいなことを書いたけど、もっともほしいのは体格で劣る部分をカバーして有り余るほどの、激しかった日馬富士の気迫だ。日馬富士のような緊迫感を持って土俵に臨んでいたのは貴景勝だったな。足りないのは、その緊迫感だ。