北の富士は華やかな横綱だったと言われますが、それは一言では語れないものがあります。容姿が華やかだった。取口が派手だった。土俵入りが華麗だった。しゃべりが軽妙洒脱だった。歌がうまかった・・・。
そして土俵上の所作も、その一つに上げられます。北の富士の塩まき、手の甲を上に向けて、手首のスナップを効かせての塩まきです。今では珍しくないかもしれませんが、当時はほとんどの力士がアンダースローでした。
もう一つこれは画像はありませんが、塩をつかむときに北の富士は右足をまっすぐに踏み出していました。つまり呼出しに向かって正対しないで、左足を引いたまま塩をつかんでいました。制限時間一杯のときは、違ったかもしれませんが。
そして千代の富士も右手を肩の位置まで上げて、塩をまいていました。そして横綱に上がるころは、さらに手首のスナップを効かせて手の甲も天井を向くようになっていきます。塩をつかむときも右足をまっすぐ踏み込んで、左足は引いていました。北の富士そっくりの所作だったと記憶しています。
千代の富士はもちろん、同郷の千代の山にスカウトされ、千代の山を慕って入門しました。それでも千代の富士が入門した昭和45年は、北の富士が横綱に昇進した年でもあります。あこがれは、当然あったと思います。土俵上の所作が似るのも分かるような気がします。
そしてこの千代の富士国民栄誉賞授与の場面、後方に写りこんでいる北の富士のにこやかで、そして誇らしそうな笑顔が何とも言えません。千代の富士の表情以上に、うれしそうな顔ですね。なつかしい場面です。